2021/02/14(日)
ステルスマーケティングという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ステルスマーケティングとは、消費者に広告と明示することなく、その商品を宣伝したり商品に関する口コミを発信したりする行為のことをいいます。このようなマーケティング手法は、低コストでかつ通常の広告より高い効果が見込めるという利点がありますが、他方で中立的な立場を装い、自社商品に対して好意的な口コミ・評価を行うことは消費者を騙す行為であり、企業及びその業界全体の信用問題にもつながる行為であると言えます。
先日、化粧品メーカーの「オルビス」の従業員が、ツイッターの個人アカウントでオルビス従業員であることを隠して自社商品の宣伝していたことが判明し、S N S上で批判が相次ぎ、会社が謝罪したという事件がありました。これも、仮に会社の指示においてなされていたとするならば、ステルスマーケティングの事例と言えます。
今回の騒動でもお分かりのように、ステルスマーケティングが判明した場合には、社会的に大きな批判に晒されます。しかしながら、このようなステルスマーケティングは法律的に違法と言えるのでしょうか?
この点、アメリカ等の欧米諸国の場合にはそれを取り締まる明確な規定が存在し、ステルスマーケティングは完全に違法です。
これに対し、日本の場合にはステルスマーケティングを正面から禁止する法律は現在においては存在しません。したがって、単なるステルスマーケティングは違法とまでは言えません。もっとも、場合よっては景品表示法の5条における「優良誤認表示」や「有利誤認表示」に該当し違法と評価されたり、宣伝する商品によっては健康増進法や医薬品、医療機器等の品質有効性及び安全性の確保等に関する法律等に違反し違法と評価されたりする可能性がありますので注意が必要です。
また2017年には、日弁連がステルスマーケティングの規制に関する意見書を提出しており、今後具体的に規制される可能性は高いと言えます。このような規制の問題意識としては、その表示が中立な第三者の意見であるかのように誤認されるならば、消費者の合理的な選択が阻害されてしまう恐れがあるという点にあります。したがって、現在においては規制されていないとしても、ステルスマーケティングを取り巻く昨今の議論状況に鑑みれば、企業としては厳に慎むべきマーケティング方法と言えるでしょう。