twitter instagram

桜井総合法律事務所

お知らせ・記事一覧

化粧品広告に体験談を掲載する際の問題点

2020/10/05(月)

 

Q:今回新発売する化粧水は、発売前に当社のお客様に使用していただき多数のお客様からお喜びやお褒めの言葉をいただきました。このようなお客様の声は販促活動において重要なご意見であり有効活用すべきと社内から意見がありましたので、お声を前面に出した広告を展開したいと考えています。

具体的には、「この化粧水を使用したら乾燥が気にならなくなりました。」「キメが細かくなって、チョット嬉しくなるくらい効果が実感できました。」というお客様の声を掲載したいと考えています。このコメントは実際にお客様から寄せられたコメントであり当社では一切の加工をしておりません。

先生に教えてもらった化粧品等適正広告ガイドライン(以下「ガイドライン」)にも化粧品の効能効果の範囲として「皮膚の乾燥を防ぐ」と表現することが認められているため問題ないですよね?

 

A:確かに、「皮膚の乾燥を防ぐ」との表現はガイドラインで認められており、今回新発売する化粧品には皮膚の乾燥を防止する成分が含まれているため問題ないとも思われます。

もっとも、前述のガイドラインには、「化粧品等の効能効果又は安全性についての愛用者の感謝状、感謝の言葉の例示等、使用経験又は体験談(タレントや自他者を問わない。)広告は、客観的裏付けとはなりえない。従って、消費者に対し化粧品等の効能効果又は安全性について誤解を与えるおそれがあるので行わないこと。」とあります。体験談は、たとえ実際に使用し体験した消費者がそのように感じたとしてもそのまま広告に記載することは禁止されています。

まず前提として、広告に使用体験談を掲載する目的は、あくまで販売を促進させることです。とするならば、掲載する消費者の声は効果を実感できた方のものだけであり、効果を実感できなかった方の声まで掲載する会社はいらっしゃらないかと思われます。

 

この点、人の肌は様々であり、同じ化粧水を使用したとしても効果を感じられる方もいれば、全く感じられない方もいらっしゃいます。

それにもかかわらず、広告で効果があったお客様の体験談のみを掲載することは、一般消費者に対して安全性や効能効果が確実であるかのような誤解を与える可能性があります。

そのためガイドラインは、お客様の使用体験談が化粧品等の効能効果又は安全性の客観的裏付けとならないことを理由として掲載を原則禁止しているのです。

 

もっとも、ガイドラインではすべての使用体験談の記載を禁止しているわけではなく「効能効果又は安全性以外の使用方法・使用感・香りのイメージ等に関しては、事実に基づく使用者の感想の範囲であれば認められるものとする。」としています。

そのため、「しっとりした使い心地が私好みです。」「さっぱりとした感触が私にピッタリです。」などあくまでお客様が感じた感想にとどまる表現であれば掲載することができますので、その範囲でお客様の声を有効活用していきましょう。